2級商業簿記項目 第三



第三 決算

3. 決算整理   (2級新出項目のみ)

(1) 期末商品の棚卸

参照. 売上原価の計算3級 第三 3.(2). 商品の決算整理

1. 棚卸減耗

商品の棚卸方法
継続記録法:
商品の受渡しのつど商品有高長に記入し、商品有高を帳簿のうえで明らかにする。
帳簿から常に払出数量と残りの数量を知ることができるが、盗難・紛失などによる減耗の発生を知ることができない。
棚卸計算法:
商品手許有高を実際に調査して明らかにする。

棚卸減耗量: 両者の棚卸方法を併用してわりだした帳簿棚卸数量と実地棚卸数量の差異
棚卸減耗費: 棚卸減耗量による損失

棚卸減耗費 = 原価 × (帳簿棚卸数量 − 実地棚卸数量)

損益計算書への表示区分
ア. その減耗が原価性がある(保管または販売する過程において避けられないもの)と認められる場合は、売上原価の内訳科目または販売費とする。
イ. その減耗が原価性がないと認められる場合は、営業外費用または特別損失とする。

2. 商品評価損

低価法:
決算において商品の時価が取得原価よりも下落しているときは、取得原価を時価まで減額する。
商品評価損: 時価の下落によって生じる損失

商品評価損 = (原価 − 時価) × 実地棚卸数量

損益計算書への表示区分
ア. 時価が取得原価より著しく下落したときには、原則として営業外費用または特別損失とする。
イ. 通常の低価法では、原則として売上原価の内訳または営業外費用とする。

例) 期首商品棚卸高は \380,000、期末商品棚卸高の内訳は次の通りである。
帳簿棚卸数量 400個  原価 @\700
実地棚卸数量 380個  時価 @\650

<1> 期首商品棚卸高を仕入勘定へ
<2> 期末商品棚卸高を繰越商品勘定へ
<3> 棚卸減耗費 = \700×(400-380) = 14,000
<4> 商品評価損 = (\700-\650)×380 = 19,000

<1> (借) 仕入 380,000 (貸) 繰越商品 380,000
<2> (借) 繰越商品 280,000 (貸) 仕入 280,000
<3> (借) 棚卸減耗費 14,000 (貸) 繰越商品 14,000
<4> (借) 商品評価損 19,000 (貸) 繰越商品 19,000

商品評価損  (\700-\650)×380=19,000 棚卸減耗費
\700×
(400-380)=
14,000
整理後繰越商品
\650×380=247,000


(2) 引当金の設定

1. 貸倒引当金の設定

参照. 貸倒れ3級 第三 3.(3). 貸倒引当金の設定

差額補充法:
必要な見積額と期末残高との差額を不足分として繰り入れるか、または超過額を戻し入れる。
洗替法:
期末残高をすべて貸倒引当金戻入勘定に振替えた後、新たに貸倒引当金を設定する。

例) 売掛金 \100,000に対して3%の貸倒見積もり、貸倒引当金残高 \2,000

[差額補充法]
(借) 貸倒引当金繰入 1,000 (貸) 貸倒引当金 1,000
[洗替法]
(借) 貸倒引当金 2,000 (貸) 貸倒引当金戻入 2,000
  貸倒引当金繰入 3,000   貸倒引当金 3,000

2. 修繕引当金の設定

参照2級 第ニ 6.オ. 修繕引当金

<1>修繕引当金を計上した。
<2>建物の修繕と改良を行った。

<1> (借) 修繕引当金繰入 1,300,000 (貸) 修繕引当金 1,300,000
<2> (借) 建物 4,500,000 (貸) 当座預金 6,500,000
    修繕引当金 1,300,000      
    修繕費 700,000      

3. 退職給与引当金の設定


<1>退職給与引当金を計上した。
<2>従業員が退職したので、退職金を現金で支払った。

<1> (借) 退職給与引当金繰入 900,000 (貸) 退職給与引当金 900,000
<2> (借) 退職給与引当金 700,000 (貸) 現金 700,000


(3) 有価証券の評価

参照. 低価法3級 第三 3.(4). 有価証券の評価

有価証券の評価替え  低価法:
決算において有価証券の時価が取得原価よりも下落しているときは、取得原価を時価まで減額する。
複数の種類の有価証券がある場合には、個別に評価する。

例) 有価証券の内訳は次のとおり。評価は低価法による。
帳簿価格 時価
A社株式 \126,000 \148,000
B社株式 \166,000 \152,000
C社社債 \195,000 \190,000
有価証券評価損 = (166,000-152,000)+(195,000-190,000) = 19,000
(借) 有価証券評価損 19,000 (貸) 有価証券 19,000


(4) 減価償却費の計上


参照. 定額法3級 第三 3.(5). 減価償却費の計上

定額法:
毎年の減価償却費 = (取得減価 − 残存価額) ÷ 耐用年数

定率法:
取得原価から減価償却累計額を差し引いた未償却残高に一定の償却率を乗じて計算する方法。
耐用年数の初期に多額の減価償却費が計上され、次第に減価償却費が減少していく。
毎年の減価償却費 = (取得減価 − 償却累計額) × 償却率

生産高比例法:
航空機・自動車・鉱山設備などのような、総利用可能量と当期の利用量を運行距離や採掘量などの基準で測定できる資産に用いられる。
当年度の減価償却費 = (取得減価 − 残存価額) × (各年度の利用高 / 予測総利用高)

なお、年度の途中から使用した固定資産の減価償却は月割計算による。
当年度の減価償却費 = 1年間の減価償却費 × (使用月数 / 12)

例) 固定資産の減価償却を次のとおり行う。決算日12/31。
建物: 定額法; 耐用年数 30年; 残存価額 取得原価の10%  (建物勘定残高 \900,000)
備品: 定率法; 償却率 年30%  (備品勘定残高 \100,000、備品減価償却累計額残高 \30,000)
なお、建物のうち \400,000は9月1日に完成し、引渡しを受けたものである。

建物: (500,000-50,000)÷30 + (400,000-40,000)÷30×(4/12) = 19,000
備品: (100,000-30,000)×0.3 = 21,000

(借) 減価償却費 40,000 (貸) 建物減価償却累計額 19,000
    (貸) 備品減価償却累計額 21,000


(5) 無形固定資産の償却


無形固定資産の償却は、残存価格を零とし定額法により行い、記帳は直説法による。

営業権は商法の規定により取得後5年以内に償却しなければならない。
特許権は法律が認める期限までの期間内に償却する。

(借) 営業権償却 120,000 (貸) 営業権 120,000
(買入代価 \600,000、初年度の償却)


(6) 繰延資産の償却

株式会社特有の整理事項で、商法により償却年数は次のように定められている。

創立費 ・・・ 会社設立後5年以内
開業費 ・・・ 開業後5年以内
新株発行費 ・・・ 株式発行後3年以内
社債発行差金 ・・・ 社債の償却期限内
社債発行費 ・・・ 社債の発行後3年以内 (社債の償却期限が3年未満のときは償却期限内)

例) 試算表の各勘定の残高は以下のとおり。
@ 創立費 \500,000、今年度創立
A 開業費 \300,000、今年度開業
B 新株発行費 \400,000、前年度発行
C 社債発行差金 \200,000、今年度発行、償却期限5年
D 社債発行費 \450,000、今年度発行

@ (借) 創立費償却 100,000 (貸) 創立費 100,000
A (借) 開業費償却 60,000 (貸) 開業費 60,000
B (借) 新株発行費償却 200,000 (貸) 新株発行費 200,000
C (借) 社債発行差金償却 40,000 (貸) 社債発行差金 40,000
D (借) 社債発行費償却 150,000 (貸) 社債発行費 150,000


(7) 税金の計上

参照.2級 第二 22. 税金

例) 税引前当期純利益 \500,000の50%を法人税等として計上する。

(借) 法人税等 250,000 (貸) 未払法人税等 250,000


5. 純損益の振替

イ. 未処分利益勘定、未処理損失勘定への振替

参照 2級 第四 6. 利益の処分または損失の処理


6. 帳簿の締切

ア. 仕訳帳と総勘定元帳 (大陸式)

参照. 英米式 3級 第三 7. 繰越試算表

大陸式決算法:
決算に関する記入を、すべて仕訳帳をとおして行う。
決算にあたり元帳に決算残高勘定を設けてこれに資産・負債・資本の各勘定を振替えて各勘定を締め切る。
ドイツ、フランス、イタリアなどのヨーロッパ各国で用いられおり、複式簿記のしくみを明らかにする点では優れている。

<1> 資産に関する勘定の振替
<2> 負債・資本に関する勘定の振替
<3> 帳簿の締切 ・・・ 各勘定の借方と貸方の金額をそれぞれ合計して記入し締め切る。
<4> 開始記入 ・・・ 翌期首に、開始仕訳を行う。

<1> (借) 決算残高 ××× (貸) 資産の諸勘定 ×××
<2> (借) 負債の諸勘定 ××× (貸) 決算残高  ×××
    資本の諸勘定 ×××  
<4> (借)  資産の諸勘定 ××× (貸) 開始残高 ×××
    開始残高 ×××    負債の諸勘定 ×××
       資本の諸勘定 ×××


8. 損益計算書と貸借対照表の作成 (勘定式、報告式)
9. 財務諸表の区分表示

参照 3級 第三 8. 損益計算書と貸借対照表の作成

1. 損益計算書

勘定式:
勘定口座と同じ形式のもので、借方に費用項目、貸方に収益項目を記載する。
報告式:
収益と費用を上下に記載し、収益から費用を差し引く形式で記載する。

営業利益: 売上高 − 売上原価 − 販売費及び一般管理費
企業の目的とする営業活動によって得られた利益。
経常利益: 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用
本業の営業活動とそれに関連して行われる経常的な金融活動によって得られた利益で、企業の1会計期間の業績を示す。
当期純利益: 経常利益 + 特別利益 − 特別損失

2. 貸借対照表

勘定式:
勘定口座と同じ形式のもので、借方に資産の部、貸方に負債・資本の部を記載する。
報告式:
資産の部・負債の部・資本の部の順で上から下へ向けて記載する。

資産の部 ・・・ 流動資産、固定資産、繰延資産
負債の部 ・・・ 流動負債、固定負債
資本の部 ・・・ 資本金、剰余金

流動性配列法:
資産については現金預金を初めに記載し、次いで現金化の速度の速いものから、負債については支払期間の短いものから示す。


10. 利益処分計算書または損失処理計算書


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