3級商業簿記項目 第三



第三 決算

決算における簿記の目的
@ 一年間の経営成績を正しく計算する
A 期末の財政状態を明らかにする。

1. 試算表の作成

試算表 (Trial Balance : T/B):
元帳の各勘定の残高または合計金額を集めて作成した一覧表。

(1) 合計試算表 ・・・ 各勘定の借方合計・貸方合計を集計
(2) 残高試算表 ・・・ 各勘定の借方残高・貸方残高を集計
(3) 合計残高試算表 ・・・ 内側の合計欄を記入してから外側の残高欄を記入する


2. 精算表

精算表:
決算整理前試算表に決算整理仕訳を加えて、損益計算書、貸借対照表を作成するという決算の一連の手続きを一覧表にしたもの。8桁精算表がよく用いられる。

6桁精算表 ・・・ 残高試算表、損益計算書、貸借対照表
8桁精算表 ・・・ 残高試算表、修正記入、損益計算書、貸借対照表
10桁精算表 ・・・ 残高試算表、修正記入、損益計算書、貸借対照表、整理後試算表


3. 決算整理

決算整理: 決算を行うために必要な帳簿の修正手続き。
棚卸表: 決算整理事項を一覧表にしたもの。
決算整理事項  3級では以下の8種類の決算整理を行う。

(1) 現金過不足の決算整理

参照. 期中の仕訳第二 2.ウ. 現金の過不足

@ 原因不明の不足額がある場合
A 原因不明の超過額がある場合
B 期末に原因不明の不足額が発生した場合
C 期末に原因不明の超過額が発生した場合

@ (借) 雑損 4,000 (貸) 現金過不足 4,000
A (借) 現金過不足 4,000 (貸) 雑益 4,000
B (借) 雑損 7,000 (貸) 現金 7,000
C (借) 現金 7,000 (貸) 雑益 7,000

(2) 商品の決算整理

売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 − 期末商品棚卸高
売上総利益 = 売上高 − 売上原価

3分法で仕訳をすると決算時に繰越商品勘定を用いて帳簿を実際に合わせる。

<1> 期首商品棚卸高を仕入勘定へ
<2> 期末商品棚卸高を繰越商品勘定へ

<1> (借) 仕入 50,000 (貸) 繰越商品 50,000
<2> (借) 繰越商品 70,000 (貸) 仕入 70,000

(3) 貸倒引当金の設定

翌期以降に貸倒れの発生が予想される場合、将来の貸倒れに備えて決算時に貸倒れの見積額を早目に費用として見越し計上する。こうすることで、思いがけない損失を防ぐことができる。

見積り額 = 設定対象 (受取手形および売掛金) × 設定率
差額補充法:
必要な見積額と残高との差額を不足分として繰り入れるか、または超過額を戻し入れる。

@ 不足する場合  (売掛金 \100,000に対して3%の貸倒見積もり、貸倒引当金残高 \2,000)
A 超過する場合  (売掛金 \100,000に対して3%の貸倒見積もり、貸倒引当金残高 \5,000)

@ (借) 貸倒引当金繰入 1,000 (貸) 貸倒引当金 1,000
A (借) 貸倒引当金 2,000 (貸) 貸倒引当金戻入 2,000

貸倒発生−期中

@ 貸倒引当金残高≧貸倒実際発生額 の場合
A 貸倒引当金残高<貸倒実際発生額 の場合
B 貸倒引当金残高がない場合

@ (借) 貸倒引当金 30,000 (貸) 売掛金 30,000
A (借) 貸倒引当金 30,000 (貸) 売掛金 40,000
    貸倒損失 10,000      
B (借) 貸倒損失 20,000 (貸) 売掛金 20,000

貸倒処理分の回収

(借) 現金 10,000 (貸) 償却債権取立益 10,000

(4) 有価証券の評価

有価証券の評価替え  低価法:
決算において有価証券の時価が取得原価よりも下落しているときは、取得原価を時価まで減額する。

(借) 有価証券評価損 2,000 (貸) 有価証券 2,000
(取得原価 \1,000,000、時価 \980,000)

(5) 減価償却費の計上

有形固定資産は使用または時の経過によりその価値が減少していく。これを減価といい、
決算において減価を帳簿上に反映させる手続きを減価償却という。

定額法:
有形固定資産の耐用年数と残存価額を定め、耐用年数を通じた各期の減価償却費が一定となるように減価償却費を計上する方法。
残存価額は通常取得減価の10%、耐用年数は使用可能年数。

記帳方法
直説法:
減価償却費を固定資産勘定から直接差し引く方法。
固定資産の現在高は示されるが、その取得原価および減価償却累計額を知ることは難しい。
間接法:
減価償却累計額勘定を設けて記入する。
固定資産の取得原価および減価償却累計額を知ることができる。
実質価値は、(備品 − 減価償却累計額) となる。

1年間の減価償却費 = (取得減価 − 残存価額) ÷ 耐用年数

[直接法]
(借) 減価償却費 90,000 (貸) 備品 90,000
[間接法]
(借) 減価償却費 90,000 (貸) 減価償却累計額 90,000
(取得原価 \500,000、残存価額は取得原価の10%、耐用年数5年)

(6) 費用・収益の見越しと繰延

支払額と費用額、収入額と収益額が期間的にずれる場合があるので、これを調整する。

@ 費用の繰延べ: 翌期の分の費用を先払いした場合
A 収益の繰延べ: 翌期の分の収益を先にもらった場合
B 費用の見越し: すでに発生しているが、まだ支払っていない後払いの費用がある場合
C 収益の見越し: すでに発生しているが、まだ受け取っていない後受取の収益がある場合

例) 決算日 12/31
@ 支払保険料は \240,000は4/1に向こう1年分を前払いしたものである。
翌期分 = 240,000×(3/12) = 60,000
A 受取手数料は \120,000は6/1に向こう1年分を受け取ったものである。
翌期分 = 120,000×(5/12) = 50,000
B 借入金 \300,000は9/1に借入期間1年、年利4%で借り入れたもので利息の支払は返済時に行う。
当期分 = 300,000×4%×(4/12) = 4,000
C 貸付金 \100,000は10/1に貸付期間1年、年利6%で貸し付けたもので利息の受取は回収時に行う。
当期分 = 100,000×6%×(3/12) = 1,500

@ (借) 前払費用 240,000 (貸) 支払保険料 240,000
    (前払保険料)        
A (借) 受取手数料 50,000 (貸) 前受収益 50,000
          (前受手数料)  
B (借) 支払利息 4,000 (貸) 未払費用 4,000
          (未払利息)  
C (借) 未収収益 1,500 (貸) 受取利息 1,500
    (未収利息)        

(7) 消耗品の決算整理

<1> 購入時  <2> 決算整理仕分け

[資産として処理する場合]
<1> (借) 消耗品 30,000 (貸) 現金 30,000
<2> (借) 消耗品費 20,000 (貸) 消耗品 20,000
[費用として処理する場合]
<1> (借) 消耗品費 30,000 (貸) 現金 30,000
<2> (借) 消耗品 10,000 (貸) 消耗品費 10,000

(8) 引出金の決算整理

参照. 期中の仕訳第二 20.ア. 資本金

(借) 資本金 20,000 (貸) 引出金 20,000


4. 収益と費用の損益勘定への振替

損益振替:
1年間の儲けを算出するために、収益勘定すべてと費用勘定すべてを損益勘定に振替える。

@ 収益勘定の振替
A 費用勘定の振替

@ (借) 売上 150,000 (貸) 損益 160,000
    受取利息 10,000      
A (借) 損益 105,000 (貸) 仕入 100,000
          支払利息 5,000


5. 純損益の振替

ア. 資本金勘定への振替

資本振替:
損益勘定で求めた当期純利益または当期純損失を、資本金勘定に振替える。

(借) 損益 45,000 (貸) 資本金 45,000


6. 帳簿の締切

ア. 仕訳帳と総勘定元帳 (英米式)

(1) 収益・費用の各勘定の締切
借方合計と貸方合計が一致したら二重線で締め切る。

(2) 資産・負債の各勘定と資本金勘定の締切
次期繰越と記入して帳簿を締め切る。
一方、次期の最初の日付で、仕訳帳のはじめに前期繰越を記入する。

イ. 補助簿

7. 繰越試算表

繰越試算表:
資産・負債・資本の各勘定の締切が終わったら、これらの勘定の繰越記入が正しく行われたかどうか確認するために、各勘定の次期繰越高を集計して作成する。
このような元帳の締切法を英米式決算法という。
イギリス、アメリカ、日本で用いられており簡便である。

8. 損益計算書と貸借対照表の作成

(1) 損益計算書の作成

@ 仕入勘定残高は売上原価として表示する。
A 売上勘定残高は売上高として表示する。
B 貸借差額を、当期純利益または当期純損失として表示する。

(2) 貸借対照表の作成

@ 繰越商品勘定残高は商品として表示する。
A 貸倒引当金、減価償却累計額勘定残高は、資産の部の売掛金、有形固定資産勘定残高から控除形式で表示する。
B 貸借差額を、当期純利益または当期純損失として表示する。

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