1. 資産・負債・資本・費用・収益

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さて、いよいよベクトルを用いた資産・負債・資本の解説に入ります。
考え方は簡単で、資本を上方向(正)のベクトル、負債を下方向(負)のベクトル、資産を資本と負債のベクトルの長さ、すなわちスカラーで表します(図1.5)。赤い線が基準線で、それより上が資本、下が負債です。
便宜的に、資産を資産棒、資本を資本ベクトル、負債を負債ベクトルと呼びます。また、基準線より上側を正方向、下側を負方向と定義します。


図1.5 ベクトルを用いた資産・負債・資本の表現

取引が発生したら次のように表していきます。

まず、収益が発生して資産が増加したら、資産棒を正方向に伸ばします。伸ばした部分を青色の四角で示しました。すると、隣の資本ベクトルの上に青い点線で示したベクトルが資本の増加分となります。ただし、この資本の増加は、仕訳の段階では仕訳帳に記入しないので、点線にしてあります。決算時に資本ベクトルに足されることになります。

次に、費用が発生して資産が減少したら、資産棒の正の部分を負方向に縮めます。縮めた部分を赤色の四角で示しました。すると、資本ベクトルの先端わきに赤い点線で示したベクトルが資本の減少分となります。ただし、この資本の減少も、仕訳の段階では仕訳帳に記入されず、決算時に資本ベクトルに足されることになります(つまり、正方向の資本ベクトルに負方向のベクトルが足されるので、資本ベクトルの大きさは小さくなる)。

青色は資産、負債、資本の増加を、赤色は減少を示しています。

このようにしてベクトルを用いて図示していくと、収益の発生に伴う資本の増加、費用の発生に伴う資本の減少の様子が一目でわかります。

そこで次は、すべての起こりうる取引の組み合わせについて、同様に図示して、取引の内容を考えていきます。

図1.6に示すように取引の要素は8種類あり、そのうち4つは借方に、残りの4つは貸方に記入されます。これらの組み合わせは全部で13通りあります。
原理的に、費用の発生−収益の発生、費用の発生−資本の増加、収益の発生−資本の減少という3つの組み合わせはありません。


図1.6 取引の8要素の組み合わせ

各組み合わせには次のように番号をつけました。
(1) 資産の増加−資産の減少
(2) 資産の増加−負債の増加
(3) 資産の増加−資本の増加
(4) 資産の増加−収益の発生
(5) 資本の減少−負債の減少
(6) 資産の減少−資本の減少
(7) 資産の減少−費用の発生
(8) 負債の増加−負債の減少
(9) 負債の増加−資本の減少
(10) 負債の増加−費用の発生
(11) 負債の減少−資本の増加
(12) 負債の減少−収益の発生
(13) 資本の増加−資本の減少
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