1. 資産・負債・資本・費用・収益
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ベクトルを用いた説明に移る前に、少しだけベクトルについて触れておきます。
ベクトル (vector):
大きさと向きの情報を持ったもの。矢印のようなもので矢が長いほど大きい。
これだけわかっていれば簿記の説明には何の問題もないですけど、覚えておくと面白いこともあると思いますのでもうちょっと書いておきます。
1993年以前に高校入学の方は代数幾何で、1994年以降に高校入学の方は数Uで習います。
とても簡単な概念だけど、物理学ではひじょうーーーによく使われるものです。
ベクトルは大きさと向きの情報を持っていますが、これに対して大きさの情報しか持っていない普通の数はスカラー
(scalar)といいます。

図1.4 ベクトル概念図
図1.4にいかにも教科書にありそうな図を示しました。
平面上に描かれた図で、横方向をX軸、縦方向をY軸と呼ぶことが多いです。
ベクトル記号はアルファベットなどの上に小さく矢印をつけて表されます。
ベクトルの長さはベクトル記号に絶対値の記号(|
|)をつけて表します。
aベクトルの向きはX成分が3、Y成分が1となります。
大きさは三平方の定理(直角三角形の斜辺の長さの平方は、残り2辺のそれぞれの辺の平方の和に等しい)から(√10)と出てきます。
bベクトルについても同様です。
小中学校の理科で「力の大きさ」について学びますが、力はまさにベクトルで表されます。
力は引っ張る(押す)向きと大きさの両方の情報で特定できます。
O点(原点)に大きな物体があるとします。
A君がaベクトルで表される力で引っ張り、B君がbベクトルで表される力で引っ張ったとすると、二人の力をあわせた力(合力)は、aベクトルとbベクトルの和(a+b)ベクトルで表されます。
また、合力は二人の力によって作られる平行四辺形の対角線になっています。
合力は作図で簡単に求めることができます。
当たり前のことですが、二人の力の向きが平行に近くなるほど、合力は大きくなり、反対に二人の力の向きが正反対に近くなるほど、合力は小さくなります。
これは私たちの日常生活にもいえることです。何人かが同じ方向に向かって努力すれば仕事がとてもはかどるけど、みんなばらばらな方向に向かって努力しても、物事はちっとも前に進みません。
ベクトルの考え方は、気づかないけれどみんなが自然と使っているものなのですね。