3級商業簿記項目 第二



第二  諸取引処理

1. 現金預金

ア. 現金

通貨代用証券:
他人振出小切手、郵便為替証書、送金小切手、期限の到来した公社債の利札、配当金領収書の5種類。
これらは、郵便局や銀行ですぐに現金に換えてもらうことができるので 現金勘定で処理する。

@ 現金を受け取った
A 他人振出小切手を受け取った
B 郵便為替証書を受け取った
C 送金小切手を受け取った
D 公社債の利札の期限到来
E 配当金領収書の受取

@ (借) 現金 80,000 (貸) 売上 80,000
A (借) 現金 30,000 (貸) 売掛金 30,000
B (借) 現金 50,000 (貸) 売上 50,000
C (借) 現金 20,000 (貸) 売掛金 20,000
D (借) 現金 10,000 (貸) 有価証券利息 10,000
E (借) 現金 5,000 (貸) 受取配当金 5,000


イ. 現金出納帳

ウ. 現金過不足

(1) 実際>帳簿

  (借) 現金 4,000 (貸) 現金過不足 4,000
・原因判明時 (借) 現金過不足 4,000 (貸) 受取手数料 4,000

(2) 実際<帳簿

  (借) 現金過不足 4,000 (貸) 現金 4,000
・原因判明時 (借) 通信費 4,000 (貸) 現金過不足 4,000

参照第三 3.(1) 現金過不足の決算整理

エ. 当座預金、その他の預貯金

当座預金:
主に決済専用に設ける無利息の銀行預金のこと。
口座を開設すると、小切手帳がもらえるので、その小切手を使ってお金を引き出す。

@ 当座預金に現金を預け入れ
A 当座預金の引出し (小切手の振出)
B 他人振出小切手を直ちに当座預金に預け入れ
C 自己振出小切手の受取

@ (借) 当座預金 500,000 (貸) 現金 500,000
A (借) 現金 500,000 (貸) 当座預金 500,000
B (借) 当座預金 500,000 (貸) 売上 500,000
C (借) 当座預金 50,000 (貸) 売掛金 50,000


オ. 当座借越

当座借越:
当座借越契約を結ぶことによって、 ある一定の限度額まで残高を超えて小切手の決済に応じてくれる。この残高を超えた部分を 当座借越といい、銀行からの一時的な借金を意味する。

(1) 二勘定制

<1> 残高を超えた小切手振出
<2> 預入れ (振込み)

<1> (借) 仕入 80,000 (貸) 当座預金 50,000
          当座借越 30,000
<2> (借) 当座借越 30,000 (貸) 売掛金 120,000
    当座預金 90,000      

(2) 一勘定制

<1> 残高を超えた小切手振出
<2> 預入れ (振込み)

<1> (借) 仕入 80,000 (貸) 当座預金 80,000
<2> (借) 当座預金 120,000 (貸) 売掛金 120,000

カ. 当座預金出納帳

ク. 小口現金

小口現金:
会計係が比較的大きな金額の取引を扱うのに対して、 用度係はお茶代、文具代といった小額の経費の支払を扱う。
用度係の管理するお金を小口現金という。
小口現金の支払方法は、一般に定額資金前渡制度 (インプレスト・システム)が用いられる。

<1> 用度係へ小切手振出 (一定額資金の前渡し)
<2> 毎日の小口経費の支払い
<3> 用度係からの支払額の報告と同額の補給
注: <3>では、小口現金勘定を相殺消去して当座預金勘定のみ貸方に記入する。

<1> (借) 小口現金 60,000 (貸) 当座預金 60,000
<2>   仕訳なし        
<3> (借) 通信費 12,000 (貸) 当座預金 45,000
    交通費 20,000      
    光熱費 13,000      

ケ. 小口現金出納帳


2. 有価証券

ア. 売買

有価証券: 株式、公社債 (公債 (国債、地方債)、社債)
有価証券の取得原価 = 購入代価 + 取得費用

(1) 株式の取得

株式の取得原価 = 1株の購入単価 × 株数 + 手数料など
例) 額面 \50,000の株式を1株につき \60,000で買い入れ、手数料 \20,000とともに小切手を振り出して支払った。
    取得原価 = 60,000×10株+20,000 = 620,000

(借) 有価証券 620,000 (貸) 当座預金 620,000

(2) 社債の取得

社債は1口=\100で売買される。
社債の取得原価 = 額面総額 ÷ 100 × 1口の単価 + 手数料など
例) 額面総額 \1,000,000の社債を額面 \100につき \97で買い入れ、手数料 \10,000とともに現金で支払った。
    取得原価 = 1,000,000÷100×97+10,000 = 980,000

(借) 有価証券 980,000 (貸) 現金 980,000

(3) 有価証券の売却

(借) 現金 700,000 (貸) 有価証券 620,000
    有価証券売却益 80,000

(借) 現金 960,000 (貸) 有価証券 980,000
有価証券売却損 20,000    

イ. 評価法 (低価法)

参照第三 3.(4) 有価証券の評価


3. 売掛金、買掛金

ア. 売掛金、買掛金

売掛金: 売主が後日代金を受け取る権利 (=債権)の勘定
買掛金: 買主が後日代金を支払う義務 (=債務)の勘定

(1) 売主側

・掛売り (借) 売掛金 10,000 (貸) 売上 10,000
・掛値引 (借) 売上 1,000 (貸) 売掛金 1,000
・掛返品 (借) 売上 2,000 (貸) 売掛金 2,000
・回収 (借) 現金 7,000 (貸) 売掛金 7,000

(2) 買主側

・掛売り (借) 仕入 10,000 (貸) 買掛金 10,000
・掛値引 (借) 買掛金 1,000 (貸) 仕入 1,000
・掛返品 (借) 買掛金 2,000 (貸) 仕入 2,000
・回収 (借) 買掛金 7,000 (貸) 現金 7,000

イ. 売掛金元帳と買掛金元帳


4. その他の債権と債務

ア. 貸付金、借入金

@ <1> お金を貸したとき  <2> 回収したとき
A <1> お金を借りたとき  <2> 返済時
B 手形でお金を貸したとき
C 手形でお金を借りたとき

@<1> (借) 貸付金 100,000 (貸) 現金 100,000
   <2> (借) 現金 105,000 (貸) 貸付金 100,000
          受取利息 5,000
A<1> (借) 現金 100,000 (貸) 借入金 100,000
   <2> (借) 借入金 105,000 (貸) 現金 105,000
    支払利息 5,000    
B (借) 手形貸付金 150,000 (貸) 現金 150,000
C (借) 現金 150,000 (貸) 手形借入金 150,000

イ. 未収金、未払金

商品以外の物を売買したときに生じる債権、債務。

@ <1> 土地等を売って代金を受け取っていないとき <2> 未収金の回収
A <1> 土地等を買って代金が未払いのとき  <2> 未払金の支払い

@<1> (借) 未収 150,000 (貸) 土地 100,000
          土地売却益 50,000
   <2> (借) 現金 150,000 (貸) 未収 150,000
A<1> (借) 土地 150,000 (貸) 未払金 150,000
   <2> (借) 未払金 150,000 (貸) 当座預金 150,000

ウ. 前払金、前受金

商品売買では予約する意味で、手付金とか 内金として代金の一部を前もって支払うことがある。

@ <1> 手付金等の支払い <2> 商品の受取
A <1> 手付金の受取  <2> 商品の引渡し

@<1> (借) 前払金 10,000 (貸) 現金 10,000
   <2> (借) 仕入 50,000 (貸) 前払金 10,000
          現金 40,000
A<1> (借) 現金 10,000 (貸) 前受金 10,000
   <2> (借) 前受金 10,000 (貸) 売上 50,000
    現金 40,000      

エ. 立替金、預り金

立替金: 一時的な債権
預り金: 一時的な債務、給料から天引きされる源泉所得税社会保険料など

@ <1> 給料の前貸し <2> 給料日−立替金回収
A <1> 給料日−所得税等の預り  <2> 所得税等の納付

@<1> (借) 立替金 20,000 (貸) 現金 20,000
   <2> (借) 給料 150,000 (貸) 立替金 20,000
          現金 130,000
A<1> (借) 給料 150,000 (貸) 預り金 10,000
          現金 140,000
   <2> (借) 預り金 10,000 (貸) 現金 10,000

オ. 仮払金、仮受金

内容が未確定、不明確なときに使われる仮勘定。

@ <1> 概算払い <2> 仮払金の精算 (出張旅費など)、不足額発生
A <1> 内容不明入金  <2> 内容判明

@<1> (借) 仮払金 50,000 (貸) 現金 50,000
   <2> (借) 旅費 60,000 (貸) 仮払金 50,000
          現金 10,000
A<1> (借) 当座預金 150,000 (貸) 借受金 10,000
   <2> (借) 借受金 10,000 (貸) 売掛金 10,000

カ. 他店商品券、商品券

他社が発行した商品券を他店商品券勘定(資産勘定)、
自社が発行した商品券を商品券勘定(負債勘定)で記載する。 

@ <1> 他店商品券の受取 <2> 他店商品券の精算
A <1> 自社商品券の発行  <2> 商品券で商品売上、おつりを払った

@<1> (借) 他店商品券 50,000 (貸) 売上 50,000
   <2> (借) 現金 50,000 (貸) 他店商品券 50,000
A<1> (借) 現金 30,000 (貸) 商品券 30,000
   <2> (借) 商品券 30,000 (貸) 売上 28,000
          現金 2,000


5.手形


 ア. 振出、受入、引受、取立、支払

手形: 支払期日、支払場所、金額が確定している証券のこと。手形法で定められている。

(1) 約束手形

いつ、どこで、いくらを支払うことを約束して振り出す手形。
振出人=支払人、名宛人=受取人

振出人=支払人 (借) 仕入 100,000 (貸) 支払手形 100,000
名宛人=受取人 (借) 受取手形 100,000 (貸) 売上 100,000

(2) 為替手形

振出人が、自分が債権を持っている相手を名宛人として、他の人(指図人)にお金を支払ってくださいと、 支払うことをお願いして振り出す手形。
名宛人=支払人、指図人=受取人

振出人 (借) 買掛金 500,000 (貸) 売掛金 500,000
名宛人=支払人 (借) 買掛金 500,000 (貸) 支払手形 500,000
指図人=受取人 (借) 受取手形 500,000 (貸) 売掛金 500,000

(3) 自己受為替手形    振出人=受取人

(借) 受取手形 60,000 (貸) 売掛金 60,000

(4) 自己宛為替手形
    振出人=名宛人

(借) 買掛金 50,000 (貸) 支払手形 50,000

 イ. 裏書譲渡、割引

(1) 手形の裏書

手形の受取人は、その手形を満期前に、お金の代わりに譲り渡して支払にあてることができる。
このとき、手形の裏側にサインすることから、手形を譲り渡すことを裏書という。

@ 裏書した側
A 裏書を受けた側
B 自己振出約束手形の裏書譲渡を受けたとき → 自分が振り出した約束手形が戻ってきた

@ (借) 仕入 500,000 (貸) 受取手形 500,000
A (借) 受取手形 500,000 (貸) 売上 500,000
B (借) 支払手形 500,000 (貸) 売上 500,000

(2) 手形の割引

手形の受取人は、その手形を満期前に、金融機関に持っていって現金化することができる。
このとき、割引日から満期(支払期間)までの利息(割引料) が差し引かれ残りを手取額として受け取る。
支払割引料勘定で記帳するが、支払利息と同じ性格のものなので 支払利息割引料勘定に両者をまとめて記帳することもある。

割引料 = 手形金額 × 年の割引率 × (割引日数/365日)
例) 当社は、手持ちの牡丹餅商店振出の約束手形 (4/15満期日) \100,000を取引銀行で割り引き、割引料を差し引いた金額を当座預金とした。 割引率は、年7.3%、割引日数は6日である。
    割引料 = 100,000×0.073×(6/365) = 120

(借) 当座預金 99,880 (貸) 受取手形 100,000
(借) 支払割引料 120 (貸)

 オ. 受取手形記入帳と支払手形記入帳

 カ. 手形借入金、手形貸付金

参照⇒4.ア.

6. 引当金

ア. 貸倒引当金 (差額補充法)

貸倒れ:
得意先の倒産などにより、売掛金や受取手形が回収不能になること。

参照第三 3.(3) 貸倒引当金の設定


7. 商品

ア. 分記法による売買取引の処理

売った都度、儲けと売上原価を分けて記録する仕訳の方法。
・仕入時 (借) 商品 10,000 (貸) 現金 10,000
・売上時 (借) 現金 13,000 (貸) 商品 10,000
          商品販売益 3,000

. 3分法による売買取引の処理

仕入勘定、売上勘定、 決算時には繰越商品勘定の、 三つの勘定に分けて仕訳する。

・仕入時 (借) 仕入 10,000 (貸) 現金 10,000
・売上時 (借) 現金 13,000 (貸) 売上 13,000

エ. 仕入および売上の返品、値引

参照⇒3.ア.

カ. 仕入帳と売上帳

キ. 商品有高帳

@ 先入先出法
A 移動平均法


16. 固定資産

ア. 有形固定資産の取得

有形固定資産: 建物、備品、車両運搬具、土地

取得減価 = 購入代価 + 付随費用

(借) 土地 1,200,000 (貸) 現金 1,200,000
(土地 \1,000,000買い入れ、仲介手数料 \200,000、登記費用 \50,000)

イ. 有形固定資産の売却

@ 売却価額>帳簿価額  儲かったとき
A 売却価額<帳簿価額  損したとき

[直接法]
@ (借) 未収金 700,000 (貸) 建物 550,000
    固定資産売却益 150,000
A (借) 未収金 300,000 (貸) 建物 550,000
    固定資産売却損 250,000      
[間接法]
@ (借) 未収金 700,000 (貸) 建物 900,000
    減価償却累計額 350,000   固定資産売却益 150,000
A (借) 未収金 300,000 (貸) 建物 900,000
    減価償却累計額 350,000      
    固定資産売却損 250,000      

オ. 減価償却 (直説法、間接法) (定額法)     ●決算時

参照第三 3.(5) 減価償却費の計上


20. 資本金

ア. 資本金


期中に資本金の金額を増減させないために引出金という仮勘定が使われる場合もある。

・元入れ時 (借) 現金 500,000 (貸) 資本金 500,000
・引出し時 (借) 資本金 20,000 (貸) 現金 20,000
(借) 引出金 20,000 (貸) 現金 20,000

イ. 店主勘定

ウ. 引出金

参照⇒20.ア.
参照第三 3.(8) 引出金の決算整理


21. 収益と費用


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