1. 対数 − 人間のお金に対する満足度



私たちのほとんどはもっとお金(資産)が欲しいと思っています。
現在100万円を持っている人は、1000万円持っている人をうらやみますし、1000万円を持っている人は1億円を持っている人をうらやみます。
100万円しか持っていない人は、1億円があったらさぞ幸せだろうと思うかもしれません。

でも、1億円を持っている人は、100万円しか持っていない人よりどれくらい幸せなのでしょうか。100倍持っているから100倍幸せといけばいいのですが、現実をみるとどうもそれほど幸せではないようです。100倍どころか2倍幸せにも見えません。

この原因は人間のお金に対する満足度がおそらく金額の対数に比例するからではないでしょうか。

対数には、自然数eを基底とする自然対数と、10を基底とする常用対数がありますが、社会学的なデータの分析には一般的に常用対数が用いられます。
常用対数はlogという記号で表され、Y=log (X) (X>0) のグラフをプロットすると図1.1のようになります。
X=1のときY=0、X=10のときY=1、X=100のときY=2となっています。

図1.1だけ見てもなんだかよくわかりにくいですが、図1.2のようにX軸を対数表示すると、なんとグラフは直線となります。一見、比例関係のなさそうな二つのデータも、どちらかを対数表示すると直線になることが多く、工学、理学の分野では頻繁に使用されています。
あなたのパソコンに使用されているメモリの容量やCPUの性能も対数をとると、西暦に比例します。
図1.1 Y=log(x) 図1.2 Y=log(x) (対数表示)

Yをお金に対する満足度、Xを金額として、Y=log (X)で表します。
X=10,000ならY=4、X=1,000,000ならY=6です。X=100,000,000ならY=8ですから、満足度を単純に数値化したら、1億円を持っている人は100万円を持っている人よりわずか2ポイント多く満足しているにすぎません。100万円を持っている人が、もし2倍満足したいなら、1兆円を持たなければいけません。マイクロソフトのビル・ゲイツさんぐらいにならないとだめです。

以上のことは、お金だけではなく物についてもいえるような気がします。物に恵まれている日本人が、物資が窮乏しているアフリカ人よりそれほど幸せそうでないのは、物に対する満足度も対数に比例するからなのでしょう。

だから、現在、幸せでない人は、お金や物で満たそうとするのではなく、他のもので満たすのがよいのでしょう。

それか、わずかなお金にも幸せを感じる心になることができればいいですね。あなたの子供のころを思い出してください。ふだんは駄菓子屋で数十円の買い物しかしない子供にとって、給食の集金袋に入れて学校に持っていく1000円札はとても重たいものだったでしょう。(1980年代前半の話)

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