2級商業簿記項目 第六



第六 本支店会計

@ 本店集中会計制度
支店の取引は、すべて本店に報告し、本店でこの報告にもとづいて、本店の帳簿に、本店の取引とともに記録される。
A 支店独立会計制度
支店の業績を正しくとらえるために、支店に独自の帳簿を設けて、支店の取引のすべてを記録・計算・整理する方法。
支店では本店勘定、本店では支店勘定を用いる。

本支店間の取引は、本店勘定と支店勘定に貸借反対に記入され、両勘定の残高は必ず一致する。

支店 (本店側)
支店へ商品、現金
などを送った場合
債権 (支店に貸し)
支店から商品、現金
などを受けた場合
債務 (支店に借り)
残高
一致
本店 (支店側)
本店へ商品、現金
などを送った場合
債権 (本店に貸し)
本店から商品、現金
などを受けた場合
債務 (本店に借り)
残高


1. 本支店間取引の処理

(1) 本支店間の取引

(1.1) 送金の取引

合理的な資金運用のために、本店から資金が不足している支店へ現金を送ったり、反対に余裕資金を支店から本店へ送金することがある。

[本店の仕訳]
(借) 現金 600,000 (貸) 支店 600,000
[支店の仕訳]
(借) 本店 600,000 (貸) 現金 600,000
(支店から本店へ送金)

(1.2) 商品を送付する取引

本店で一括して仕入れた商品を支店に送ったり、反対に支店で仕入れた商品を本店に送る場合などがある。

価格の決め方
ア 原価による方法 ・・・ 送る側は仕入勘定の減少とし、受入れる側は仕入勘定の増加とする。
イ 原価に一定の利益を加算した価格による方法 ・・・ 本支店間の取引と外部の取引先との売買取引を区別するために、本店より仕入勘定、支店へ売上勘定を設けて記入する (本店から支店へ送付する場合)。
ウ 市場価格による方法 ・・・ 支店の営業成績を明瞭に示すために市場価格による。記帳法はイと同じ。

例) 本店は原価 \50,000の商品を原価で支店へ送付し、支店はこの商品を受け入れた。

[本店の仕訳]
(借) 支店 50,000 (貸) 仕入 50,000
[支店の仕訳]
(借) 仕入 50,000 (貸) 本店 50,000

例) 本店は原価 \50,000の商品を原価に対して10%の利益を加算して支店へ送付し、支店はこの商品を受け入れた。

[本店の仕訳]
(借) 支店 55,000 (貸) 支店へ売上 55,000
[支店の仕訳]
(借) 本店より仕入 55,000 (貸) 本店 55,000

(1.3) 他店の債権・債務を決済した取引

本店が、支店に代わって支店の売掛金を回収したり、支店の買掛金を支払ったりする場合、また反対に支店が本店に代わって回収・支払をする場合がある。

@ 本店は、支店の買掛金 \300,000を現金で支払い、支店はこの通知を受け取った。.
A 支店は、本店の得意先から売掛金 \200,000を同店振出の小切手で受け取り、本店はこの通知を受け取った。

@ [本店の仕訳]
  (借) 支店 300,000 (貸) 現金 300,000
  [支店の仕訳]
  (借) 買掛金 300,000 (貸) 本店 300,000
A [本店の仕訳]
  (借) 支店 200,000 (貸) 売掛金 200,000
  [支店の仕訳]
  (借) 現金 200,000 (貸) 本店 200,000

(1.4) 他店の収益・費用の受払いの取引

他店の収益を受け取ったり、費用を支払ったりする場合がある。

@ 本店は、支店従業員の出張旅費 \50,000を現金で立て替えて支払い、支店はこの通知を受け取った。.
A 支店は、本店が受け取ることになっている手数料 \20,000を現金で受け取り、本店はこの通知を受け取った。

@ [本店の仕訳]
  (借) 支店 50,000 (貸) 現金 50,000
  [支店の仕訳]
  (借) 旅費 50,000 (貸) 本店 50,000
A [本店の仕訳]
  (借) 支店 20,000 (貸) 受取手数料 20,000
  [支店の仕訳]
  (借) 現金 20,000 (貸) 本店 20,000

※ (1.3)、(1.4)とも支店勘定と本店勘定を相殺したら、会社として一つの取引になるように仕訳すればよい。

[本店の仕訳]
(借) 支店 300,000 (貸) 現金 300,000
[支店の仕訳]
(借) 買掛金 300,000 (貸) 本店 300,000
(借) 買掛金 300,000 (貸) 現金 300,000

(1.5) 支店の純損益の振替え

支店独立会計制度のもとでは、支店は独自に決算を行う。
決算によって確定した支店の純損益は、本店勘定に振り替える。
本店では、この通知を受けて、本店の損益勘定に記入するとともに支店勘定に記入する。

例) 支店は決算の結果、純利益 \1,500,000を計上し、本店はこの通知を受けた。

[本店の仕訳]
(借) 支店 1,500,000 (貸) 損益 1,500,000
[支店の仕訳]
(借) 損益 1,500,000 (貸) 本店 1,500,000


(2) 支店相互間の取引

(2.1) 支店分散制度

支店相互間の取引を、それぞれの支店で、相手の支店名をつけた支店勘定で記入する。
本店の帳簿には記入されないので、本店で支店間の取引を正確に知ることはできない。

例) 桃栗三支店は、柿八支店に現金 \300,000を送り、柿八支店はこれを受け取った。

[桃栗三支店の仕訳]
(借) 柿八支店 300,000 (貸) 現金 300,000
[柿八支店の仕訳]
(借) 現金 300,000 (貸) 桃栗三支店 300,000

(2.2) 本店集中計算制度

支店相互間の取引を、それぞれの支店が、本店と取引をしたように記帳する。
本店はそれぞれの支店名をつけた勘定に記入する。

例) 桃栗三支店は、柿八支店に現金 \300,000を送り、柿八支店はこれを受け取り、本店はこの通知を受けた。

[本店の仕訳]
(借) 柿八支店 300,000 (貸) 桃栗三支店 300,000
[桃栗三支店の仕訳]
(借) 本店 300,000 (貸) 現金 300,000
[柿八支店の仕訳]
(借) 現金 300,000 (貸) 本店 300,000

※ 上の例では形式上、本店は桃栗三支店から現金を受け取り、柿八支店に送っているようになっているが、 実際に現金の受払いをしていないので、現金勘定は省いている。

[本店の仕訳]
(借) 現金 300,000 (貸) 桃栗三支店 300,000
(借) 柿八支店 300,000 (貸) 現金 300,000
(借) 柿八支店 300,000 (貸) 桃栗三支店 300,000


2. 未達事項の整理

未達取引:
一方の店で送った現金や商品または取引の通知が、他方の店に到着せず未記帳になっている場合、本店勘定と支店勘定の残高が一致しないことがある。

未達事項があるときは、決算手続きで本店または支店の項目を修正しなければならない。
未達取引の修正は、期末に現金、商品や取引の通知が到達ものとして処理する。
現金や商品は、現物が到着するまでは、未達現金未達商品という科目を用いる。

@ 本店から支店へ発送した商品 \40,000 (原価)が、支店に未達である。
A 支店から本店へ送った現金 \50,000が、本店に未達である。
B 支店が回収した本店の売掛金 \20,000の通知が、本店に未達である。
C 本店が立替払いした支店の営業費 \10,000の通知が、支店に未達である。
D 支店が本店の取引先から受け取った販売手数料 \15,000の通知が、本店に未達である。

@ [支店の仕訳]
  (借) 仕入 40,000 (貸) 本店 40,000
    (未達商品)        
A [本店の仕訳]
  (借) 未達現金 50,000 (貸) 支店 50,000
B [本店の仕訳]
  (借) 支店 20,000 (貸) 売掛金 20,000
C [支店の仕訳]
  (借) 営業費 10,000 (貸) 本店 10,000
D [本店の仕訳]
  (借) 支店 15,000 (貸) 販売手数料 15,000


3. 内部利益の除去

本支店間、支店間で商品の送付が行われる場合、原価に一定の利益を加算した振替価格によることがある。
参照.1.(1.2) 商品を送付する取引

このとき、商品を受入れた側が、その商品を売却すれば、利益は実現されることになる。
しかし、一定の利益を加算した商品が決算時に在庫として売れ残っていると、その商品に含まれている利益はまだ実現していない利益となる。これを内部利益という。(下図参照)

  本店   支店  
仕入先 MO
──→
\30,000
売上益
\3,000
振替価格
──→
\33,000
売上益
\3,000

──→
\36,000
得意先
CD-RW
──→
\30,000
売上益
\3,000
振替価格
──→
\33,000
在庫\33,000
内部利益
\3,000
 

本支店合併の損益計算書・貸借対照表を作成する場合は、内部利益を除去し、純利益の計算でも、内部利益の分だけ純利益を減少させる必要がある。次期には減少させた分だけ戻し入れる。

例) 決算時の残高および未達事項は次のとおりである。ただし、当社は、本店から支店に商品を送付する際、原価に対し20%の利益を加算している。
期末商品棚卸高  本店 \280,000  支店 \135,000 (うち、本店から仕入分 \60,000)
本店から支店へ送った商品で、支店に未達分 \36,000

<1> 内部利益の控除  (60,000+36,000)×(0.2/1.2) = 16,000
<2> 次期に戻し入れ
<1> (借) 内部利益控除 16,000 (貸) 内部利益 16,000
<2> (借) 内部利益 16,000 (貸) 内部利益戻入 16,000


4. 本支店財務諸表の合併

@ 未達事項の整理。本店勘定と支店勘定を相殺。本店より仕入勘定と支店へ売上勘定も相殺。
A 決算整理事項によって関連科目の修正。
B 合併損益計算書では、期末商品棚卸高から当期の内部利益を直接控除する。前期の内部利益は、期首商品棚卸高から直接控除する。
  合併貸借対照表では、商品から当期の内部利益を直接控除する。
C 本支店の同一科目の合算の金額を、損益計算書・貸借対照表に記入する。


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